『コーヒーが冷めないうちに』#00007
「コーヒーが、冷めないうちに」
ゆっくりとコーヒーが注がれる。立ち上がる湯気が、過去へと誘う。戻れるのは、注がれたコーヒーが冷めるまでの数分間だけ。そして、過去に戻っても、起こってしまったことは変えられない。
2017年本屋大賞を受賞した作品が、ついに映画化。
本を映画化すると、原作とまるで変わってしまうことが、ままある。そして「原作の方が面白かったー」という声もちらほら。
この『コーヒーが冷めないうちに』も、原作とは違っている部分、映画オリジナルな部分がある。ネタバレになるのでここでは書かないが、あれ? とか、急じゃない? と突っ込みたくなる部分もあった。それでも、僕はこの映画をオススメしたい。
この映画から僕が受け取ったメッセージは、2つ。
まず、「自分にとって、大切なものは何か」ということ。
この映画では、恋人、姉妹、夫婦、親子の4つの人間関係を中心に描かれている。人間なら誰でも、どれかしらは持っている関係性だ。ビジネス上の付き合いとは違う、人間の根底を築く関係性。
ぼくはこの4つのうち、2つに泣けました。この2つは、紛れもなく、今の自分に深く関係のあるものです。
なので、この映画を観て泣ける話がこの4つにあったら、その人間関係はあなたにとって重要なものでしょう。
自分にとって、何が大切なのか、
この映画をきっかけに考えて観てはいかがでしょうか?
2つ目は時間の真実。
人は変わらない、変われない。
と、よく周りでは聞こえる。
職場でも「あいつは何度言っても変わらないからなー」とか、「何言ってもダメなんだよ」とか、聞かない日がないくらいだ。
この映画でも、過去は変えられない、という現実が表現されている。
何をやっても、
何度悔やんでも、
過去は変えられない。
何をやっても……
何度悔やんでも……
でも作者は言う。
「心は変われる」
と。
たしかに、起こってしまった過去は変えられない。
しかし、まだ起こっていない未来は変えられる、
あなたの心次第で、未来は変えられる、と。
現在は、過去の経験の積み重ねだ。今まで何を見て、何を経験してきたかが今の自分を作っている。
であれば、起こった事実は変えられなくても、過去の出来事の意味づけを変えれば、今の自分も変われる、と作者は言う。
過去のちょっとした出来事が、その人の価値観を決めることがある。
僕も、昔、いじめられ、寂しさを味わったことがあるが、この経験が、今、人間関係を強く意識することにつながっている。
この経験を悪く捉えれば自己否定になって、トラウマとかになってしまう。しかし、良く捉えれば、こんな経験は他の人にはさせないようにしたい、と思えるようになる。
人は変われる、未来も変えられる。
ただ、変えるキッカケが何かは、わからない。
ちなみに、映画を観ていて気になったのは、あの席に座っている女性の本。
何冊か出てきたけど、そこに、映画の意味や作者のメッセージを観ている人が暗に気づけるような、補助線的な役割をしているように感じた。
全部は確認できなかったが、
「ねじの回転」(ジェイムス・ヘンリー)
「モモ」(ミヒャエル・エンデ)
はしっかり映るように撮られていたようだった。
ねじの回転は幽霊の話、
モモは時間の話、
どちらも映画の内容を象徴する小説です。